外傷性脳損傷(TBI)が脳に与える影響

外傷性脳損傷が脳に及ぼす影響について

脳神経外科の分野で仕事をしていく上で知っていなければならないことは多々ありますが、「外傷性脳損傷」もその一つでしょう。
脳の神経系に問題が生じ、場合によっては障害等が残ることもある脳損傷であり、英語で“Traumatic Brain Injury”と呼ばれ、『TBI』と略される症状がこれです。

この外傷性脳損傷が脳に与える影響は様々です。
程度によってはそこまで時間がかからず回復することも少なくありませんが、それこそ程度が重くなれば高次脳機能障害へと至り、あらゆる障害が残ることも珍しくはありません。いわゆる後遺症が残る可能性も捨てきれないのです。

・頭痛
・記憶力・注意力・認知力の低下
・情緒障害
・コミュニケーション障害
・四肢の麻痺

こうしたことが外傷性脳損傷の後遺症としては知られていますが、これだけではありません。
一般的な寿命と比べてそれが短くなることも報告されており、また、アルツハイマー病やパーキンソン病などに罹患する可能性も上がることが知られています。

明確な病名等はなくとも後遺症に苦しむ人々も多く、あらゆる影響が脳に及ぼされると考えるべきでしょう。

外傷性脳障害が発生する原因

外傷性脳損傷の原因は、“頭部に何らかの物理的な衝撃が加えられること”です。
これにより脳に損傷が生じ、上で挙げたような障害や症状が残る可能性が出てきます。
では、物理的な衝撃が加えられる原因は、一体どのようなことなのでしょうか。

・転倒
・自動車事故
・スポーツ外傷
・労働災害
・暴行事件

主な原因は以上のようになっています。
国や地域、年齢などによってどれが最も多い原因となっているのかは変わってきますが、転倒による外傷性脳損傷が最も多いと考えるのが一般的です。

小さな子供や高齢者の転倒がやはり多く、そのような人たちは転倒しやすいだけではなく、転倒した後に自らの頭をかばうことも困難なため、外傷性脳損傷となるケースが多くなっています。

ちなみにスポーツでは、自転車やアメリカンフットボール、バスケットボール、サッカー、野球などの競技で外傷性脳損傷となる人の割合が多くなっていますが、これは競技人口が多いためで、どのような種目でもそのリスクがあると考えておくべきでしょう。

リスクを伴う活動と活動に対する予防策

日常生活を送っている以上、外傷性脳損傷のリスクはいつ何時どこにでもあると言ってもいいでしょう。

自宅から出なければそのリスクはない、とも言い切れません。
浴室で転倒する可能性もありますし、上から物が落ちてきて物理的な衝撃が頭部に加わることも考えられるはずです。

ただ、リスクが高いという意味では、小児や高齢者の散歩や、年齢にかかわらずスポーツを行うことなどは、そのリスクを上げる可能性が高まります。
自転車やバイク、自動車の運転なども外傷性脳損傷のリスクがあるでしょう。
いわゆるガテン系と呼ばれる労働も、そのリスクの高い活動と言えます。

こうしたリスクをできるだけ下げるためには、以下のことで対策や予防を行う必要があります。

・運動機能の向上
・ヘルメットなどの着用
・スポーツ専門家による適切な指導
・危険に対する認識と知識や技術の習得

何よりも、外傷性脳損傷のリスクを知り、あらゆる活動にそうした危険性があることを知ることです。
これにより、それぞれの活動への予防策を講じることができ、最悪の事態を防ぐことに繋がるはずです。

外傷性脳損傷を防ぐための今後の見通しについて

どのような衝撃を頭部のどの部分に何度ほど加えれば外傷性脳損傷となるのかなどは、明確にはなっていません。
症状も含め個人差もあるため、今後もそうしたことが数値として出てくることはほぼないでしょう。

外傷性脳損傷を防ぐためには、正しい知識と意識を持つことが求められます。
その上で、脳震盪などの対処や危険性についても認識し、それを幅広く啓蒙していく必要性があると考えます。

日本は欧米に比べ、この部分が極端に欠けています。
スポーツの世界においては、怪我をしても最後までプレイし続けることが美徳とされる風潮がありますが、まずはこうした価値観から見直していく必要があるでしょう。

少しずつ変わりつつはありますが、化学的根拠に基づいた対策や教育がなされることが、外傷性脳損傷を防ぐために必要なことと言えそうです。
そのためにも、我々のような脳神経外科医は尽力しなければなりません。

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